リハビリ評価からプログラム立案までの5ステップ

実習生・新人向け

生活期リハビリの実習、老健への異動で苦戦していませんか?

養成校で評価の流れは学んできたのに・・・、病院ではこんなに悩まなかったのに・・・。

生活期の特徴や専門性について、養成校で取り上げることはわずかです。

これまで多くの実習生や新人・新任者の指導場面で、躓きやすいポイントがあることに気づきました。今回そのポイントを絞り込み、「プログラム立案までの5ステップ」として、情報収集からプログラム立案までの思考過程をとしてまとめてみました。

生活期リハ領域で、何に躓いているかわからなくなった時、活用いただければ幸いです!

病院のリハビリと地域のリハビリの違い

養成校では臨床プロセスを以下のように指導していると思います。

  • 情報収集→②検査測定→③問題点の抽出→④焦点化→⑤目標設定→⑥プログラム

医療現場のリハビリとしては、問題点を特定し、機能改善して退院をめざします。

しかし、生活期では問題点は多岐にわたることが多く、本人、家族が求めているものと、リハビリ目標が乖離してしまうこともあるわけです。根本的な視点として医療モデルと生活モデルの違いについて、まずは理解しておいてくださいね。

それでは、5ステップについて解説します。

ステップ1=目的の把握

1ステップは「目的の把握」です。いわゆる情報収集にあたります。

ここで大切なことは、医療は治療目的で利用されていますが、生活期は治療のため利用するわけではないということです。

平成29年の報告になりますが、老健利用目的の52.5%は家族の負担軽減、いわゆるレスパイト利用というデータがあります。ちなみにこの時のリハビリ目的は27.6%でした。

利用に至る理由を把握することで、リハビリの方向性が定まりやすくなります。

利用までの経過を確認する

利用に至る理由は前述のとおり様々です。利用するきっかけは何だったのかを把握する必要があります。身体機能が理由であれば、いつから能力低下してきたのか、直接的なきっかけはあったのか、急激な変化があったのかなどが把握したいところです。レスパイト目的であれば、介護負担度や同居家族の背景(出産、育児、受験、病気など)を把握しておきたいところです。

医療情報を確認する

リスク管理は必須です。現病歴、既往歴、合併症、服薬状況を把握します。疾患を断片的に把握するよりも、いつ頃からどんな症状を抱えて、どんな治療がなされてきたのか、その経過にそってADL状況がどのように変化してきたのか、概略でいいのでストーリーのようにとらえると、生活像がつかみやすくなります。

本人・家族の希望を確認する

ご本人の希望を確認し、ご家族の希望も確認します。本人と家族の希望が一致している場合はいいのですが、違う場合も往々にしてあります。最終的には家族(キーパーソン)の意向にウェイトが置かれることが多いと思いますが、動機づけのためには、本人の想いをしっかり受け止める必要があります。

一方本人の意向がわからないこともあります。これまでの生活歴(職業歴、趣味・特技など)をご家族に伺ってみると、人となりを理解する手助けになります。

また、同居家族が負担に感じているADLを把握し、改善の可能性を今後の評価で確認していきます。

①~③の情報を統合し、利用目的の輪郭を明確にします。

その他、情報収集の項目としては、家屋環境、実際の介護力、他部門・他事業所情報などを確認します。

利用目的を具体的にして理解できると、リハビリ介入のポイント「生活課題」が明確になりますね。

ステップ2=問題の発見

次のステップは問題点の発見になります。いわゆる検査測定・動作観察になります。

ADL・IADL状況の把握

情報収集により、家族や介護者が負担に感じているADLを把握できました。そのADL項目の実際の場面を観察する必要があります。どの程度実施可能なのか、ADL評価を行います。介護領域ではバーセルインデックス(BI)を使用していることが多く、医療領域ではFIMを使用していますが、ここでは「できないこと」に着目し、優先度の予測をします。

自立度が高い場合は、IADL項目も把握しましょう。

できない理由の予測

そして次に課題となる動作がなぜ遂行できないのかを予測していきます。

身体機能面であれば、関節可動域、筋力、感覚、疼痛、協調性などであり、認知機能面であれば、見当識、注意、記憶など。その他、意識レベル、覚醒、意欲などの確認も必要ですね。

とはいえ、どのように影響しているか予測ができないから困っているのが事実です。

対応策として、できない動作をできるだけ細分化してとらえるようにしましょう。

どういった環境場面で、どんな動作をしたときにうまくいかなかったのか、あぶないと思ったのか、痛みが発生したのかを、できるだけ細かい描写で・・・。

そうすると考えやすくなりますし、経験とともにデータベース蓄積され、評価スピードが格段に速くなります。

ここで注意したいことは、一般的に、問題(できないこと)を数多く抱えていることが多いので、あくまでも利用目的で予測した「生活課題」に即したものをターゲットとしましょう。

ステップ3=課題設定

次は課題設定です。

問題と課題の違いを整理しよう

問題と課題は同様に使いがちですが、実は根本的な違いがあります。

「問題」=できないことであり、困っていること

「課題」=どのように解決するのかという方向性

屋外歩行ができない「問題」があっても、歩行能力の改善にいたらずとも、電動車いすという代替手段を使った移動で「課題解決」するケースもあります。

解決すべき課題かを吟味する

2のステップで見出した問題が、「解決すべき課題」であるかの吟味が必要となります。

その方法として、本人の願い、家族の願い、周囲の支援者の願い、そして療法士の評価・予後予測を統合し、リハビリ実施の動機付けを行います。

ここでリハビリの方向性が示され、動機づけがなされると、本人のモチベーションが高くなっていくと考えられます。

決して問題をなくすことではなく、ゴールを達成するための方法論を、様々な角度からとらえていきましょう。

ステップ4=目標の設定

4番目は目標の設定です。目的と目標の違いは理解できているでしょうか?

1ステップでは利用目的を確認しました。ここで設定するのは目標になります。

目的は方向性であり「○○のため」と表現でき、目標は「到達する状態像」となります。

つまり、何をどのような状態にすれば目的が達成できるのかを示す必要があります。

例えば、施設ゴールが在宅復帰であれば、目標は困っている生活行為の改善として、トイレを自分でできるようになることとなります。またトイレ自立へむけた短期目標も必要になるでしょう。移乗動作の再獲得や、排泄パターンの確認など・・・。

目標が高すぎる場合、往々にしてやる気はでないものです。達成可能な課題に分割し、一歩ずつ効果を感じられるように、短期目標を設定していきましょう。

ステップ5=プログラム立案

最期はプログラム立案になります。短期目標達成にむけた必要な練習や環境設定は一体何でしょうか?基本的には先行研究やテキストを活用します。PTやOTのガイドラインも活用しましょう。

対象とする筋肉が曖昧なまま、筋力練習やストレッチをしても、効果は曖昧になります。

各プログラムにおいても、目的・目標・介入方法を具体的にすることで、効果検証が可能となります。

ここで注意したい点は、直接的な練習のみがプログラムではないということです。

セラピストは環境調整、他部門への働きかけ、家族指導も業務の範疇になります。結果を出すために出来ることは何か?としっかり考えていきましょう!

コメント

タイトルとURLをコピーしました